【多摩市】授賞式レポート②第13回TAMA映画賞で最優秀作品賞、特別賞、最優秀新進監督賞の方々についてまとめました！

第31回映画祭TAMAシネマフォーラムの最終日の2021年11月21日(日)、府中の森芸術劇場どりーむホールにおいて行われた、第13回TAMA映画賞の授賞式。

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今回は最優秀作品賞、特別賞、最優秀新進監督賞を受賞した方々について当日の様子をレポートします！

最優秀作品賞　『あのこは貴族』岨手由貴子監督、及びスタッフ・キャスト一同

違う世界を生きる二人の女性が、自らの人生を切り開いていく様を丁寧に描き、生き辛さを抱える人々の心を解放へと導いたことが評価され、今回の受賞に至った『あのこは貴族』。

授賞式では、岨手由貴子監督が登壇しました。

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ジェンダーの問題や、地方格差の問題など色々なテーマを扱っているものの、いわゆる「女性映画」とは考えてはおらず、高良健吾さんが演じた男性の登場人物も含めて「若者たちの青春譚」として制作したと語る岨手監督。

「日本の映画では、普通に生きている女性が主人公になる作品が少ない。」と指摘した上で、作中に登場する二人の「富裕層の女性」の設定として、門脇麦さんが演じるキャラクターは、富裕層の中では、そんなに個性的とか、際立った何かがあるというタイプではない女性、水原希子さんが演じたキャラクターも、地方から東京に出てきた普遍的な女性であり、特別な個性を持っていない二人を主人公にしたことをあげていました。

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「彼女たちを特別にデフォルメして、個性的な人物として描かないことや、彼女たちを戦わせないなど、目を引くような映画としてのネタを出来るだけ排除して描いた」と語っていたことが大変印象的で、そのことが自分の物語として観客に受け入れてもらえたことを大変喜んでいる様子でした。

個性を感じさせずに主人公を成立させることは大変であったことを明かしつつ、それを目指してやってきて良かったと語っていました。

最優秀作品賞　『ドライブ・マイ・カー』濱口竜介監督、及びスタッフ・キャスト一同

「常に喪失を抱えながら生きる人々は私たち自身でもあり、その再生への道のりには涙を禁じ得ないと」評価され、手話を含む多言語が交錯する舞台劇と、さまざまな人物から語られる幾重にも重なる物語の構成にも「これまで味わったことのない、新しい感性を刺激する映画」と評価され最優秀作品賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』。

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授賞式では山本プロデューサーが登壇し、多国籍な俳優を集めたZOOMを用いたオーディションの様子など、この時代だからこその制作の様子が語られたことは、大変興味深いものでした。

濱口竜介監督の現場は、俳優中心主義と表現した山本プロデューサーは、「カメラの前で演技をしている俳優、もしくは俳優分子が生み出す奇跡のような価値のある芝居というのは些細なことで消えてしまう。そういう脆いものを大事にしていきましょうという心意気で撮影に臨んでいる」と、濱口監督の作品の様子を語っていらっしゃいました。

作品の中で、多国籍な言語が飛び交う劇中劇が登場し、わからない言葉も表情や表現で補い合う俳優たちのコミュニケーション方法は、どこか非日常的でもあり、それがさらに不思議な印象を高めていたと思います。

TAMA映画賞特別賞　『花束みたいな恋をした』土井裕泰監督・坂元裕二氏、及びスタッフ・キャスト一同

幅広い世代が語らずにはいられなくなる珠玉の恋愛作『花束みたいな恋をした』に対して特別賞が授与されました。

「20代という時季にある恋愛・生活・心の移ろいを、脚本・演出・演者が一体となって描き出した」とし、日常と地続きのような作品世界が高く評価されたそうです。

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授賞式では『花束みたいな恋をした』を監督した土井裕泰監督が登壇しました。

主人公と恋人の２人について、観客が「自分たちも知っている人」「特別な人ではない」「これは私たちの物語かもしれない」という気持ちで観てもらわなけでばならないと意識をしていたそうです。

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コロナ禍以前に撮影を済ましていたそうですが、公開の延期を経て「若い恋人たちの日常が、失われてしまった尊い時間として見えるようになった」と、コロナ禍を経た作品の立ち位置の思わぬ変化について語っていたことが大変印象的でした。

TAMA映画賞特別賞　『いとみち』横浜聡子監督、及びスタッフ・キャスト一同

分かりやすさに忖度しない生粋の津軽弁と、津軽三味線のリズムにのって、じょっぱり(意地っ張り)の成長譚を描いた『いとみち』に対して、特別賞が授与されました。

津軽弁訛りや、三味線演奏から自分を見出し、周囲の励ましから力強く歩き出す主人公を描いたことが評価され受賞に至りました。

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授賞式では横浜聡子監督と、主演の駒井蓮さんが登壇しました。

青森出身の横浜監督は「ねぶた祭りや津軽三味線、岩木山など、青森は魅力の宝庫である」とし、まだまだ何本でも青森の題材で映画が撮れる！とおっしゃっていたことが大変印象的でした。

「いとみち」では、プロの俳優に加え、素人の地元のおばあちゃんなど、演劇経験のない役者が入り混じった配役であったそうです。プロと素人のコラボレーションが現場では楽しく、新たな発見があったことを明かしていました。

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自身も青森が出身という主演の駒井蓮さんは、地元で方言を使った映画に出てみたい夢が、まさかこんなに早く叶うとは！と考えていたそうです。

作中演奏した三味線の経験がなかったという駒井さんですが、「駒井さんはじょっぱり（負けず嫌い）」と横浜監督が明かし、必ずやり遂げるだろうと、確信していたことを明かしていました。

最優秀新進監督賞　松本壮史監督

『サマーフィルムにのって』において魅力的なキャラクターとスピード感のある展開で、映画の可能性と楽しさを再認識させてくれたことを評価され受賞に至ったそうです。

松本監督は、脚本を担当した三浦直之さんと、自分たちの好きなものを詰め込んだ作品をつくろうというところから作品づくりが始まったそうです。

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例えば、今回の作品でも特に評価された登場人物のキャラクター設定についても、三浦さんと大喜利のように「こんなキャラが好き、こんなキャラがいたらいいな、とゲラゲラ笑いながら二人で出し合った」と制作のエピソードを披露されていました。

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その後、『サマーフィルムにのって』に出演した伊藤万理華さん、金子大地さんも壇上に登場し、今回の第13回TAMA映画賞で、それぞれ受賞した「最優秀新進女優賞・男優賞」に加え、松本監督自身も最優秀新進監督賞を受賞できたことを大変喜んでいる様子でした。

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伊藤万理華さんと金子大地さんによるカットバックで撮り終えたラストシーンは、二人の命を燃やすような表現が撮れたそうです。

松本さんは、このラストシーンに関して「このために生きていたんだと思った」と思えるほどの出来に仕上がったそうで、その時の撮影の様子などを３人揃って披露されていました。

最優秀新進監督賞　藤元明緒監督

不法労働を強いられる女性たちの視点に立って、国際問題に真正面から挑む創作姿勢が評価され受賞に至った藤元明緒監督。

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藤元監督が監督した『海辺の彼女たち』では、近年、外国人技能実習生にまつわる劣悪な労働環境などが社会問題として注目されている中、本作は藤元監督が実際に技能実習生から受け取ったSOSメールをきっかけにして着想し制作されたそうです。

興行収入として厳しいのではと、企画段階で指摘されることもあったことを明かしていた藤元監督。しかし公開後はチケットが取れない劇場があるなど思っていた以上の反響があったのだとか！そのエピソードを受けて、題材に関心を持つ人が増えてきていることを実感したそうです。

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日本語しか話せない藤元監督は、「現場で俳優の方が何を言っているのか判断がつかないままOKを出したために、一番お金のかかったシーンが編集で全てカットになってしまった」という海外合作ならではのエピソードを披露しつつ、「良い作品にしよう」と魂をもって皆で進んでいけば、国籍・言語を超えていけることを実感していると語っていたことが印象的でした。